生きているだけで十分仕合わせだ

今まででハッとしたこと。驚いたこと。生きていくうえで確かなこと。私の息子(昭和60年生まれ)に是非伝えたいことを書いていきます.猫に小判か、みずみずしい類体験か。どうぞ後者でありますように。

現場に足を運ぶ(1) 売れるマンションは 近い 広い 安い で決まり

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現場に足を運ぶ

以前、一流の新聞記者といわれた人のことについて書かれた記事を週刊誌か何かで読んだことがあります。そのなかで、「自分は現場に必ず足を運んで記事を書いている。このことは決しておろそかにしていない。」といっていることが紹介されました。「現場に足を運ぶ」ということが、大変強く印象に残っています。

以上は、このブログの第11回目の「営業力は販売力ではなく商品企画力」のなかで書いたことです。 

「現場に足を運ぶ」ということの大切さを多くの人は案外気づいていないように思います。まして努めて実践している人となるとごくごく限られた人なのではないでしょうか。しかし「現場に足を運ぶ」ということはきわめて大切なことだと思っています。何をするにしても、「現場に足を運ぶ」ことは、問題の解決の有力な鍵となるものと考えています。それぐらい重要なことだということです。

 

近い 広い 安い

私のサラリーマン時代、当時の社長が強調されたことに、安い、広い、近いという三点がありました。社長は元大蔵官僚でしたが、大変眼力のある方で魅力的な人でした。我々の提供するマンションは、百点満点というのは難しいかもしれないが、この三つの点で百点に近いものを作ろうとするあくなき執念をもたなければならない、というのです。私はこの三点がはじめのうちはピンときませんでした。

会社で発売されるマンションは即日完売するものもあれば、建物が完成しても売れ残るものもあります。社内は、マンションが新規発売される段階になると、これはすぐ売れる、いや苦戦する、などと喧しいことでした。自分は売れる売れないがだいたい解る、といって豪語する人でも案外当っていませんでした。安い、広い、近いの三点から正しく分析、判断する人は一人もいません。

私は、一念発起して、自社のみならず他社のものも、新規発売されるマンションで即日完売するものを見ることにしました。毎週土、日を使って、即日完売したマンションの現場に足を運びました。マンション通いを2年ぐらいは続けたと思います。はじめのうちは、なぜ即日完売なのか、はっきり解りませんでしたが、ある時、不意にピーンとくるものがありました。これは実に不思議なことでした。そして、それからは、なぜ即日完売なのか、はっきりと解るようになりました。もちろん、マンションに足を運ぶ前に、一応、安い、近い、広いを大まかに分析していきます。しかし細かな理由は解りませんが、何故かマンションを現地で見ると、即日完売することが諒解されるのです。

こんな経験は私にとってはじめてでした。

とにかく理屈はどうでもよいから、マンションの現地を多く見る、徹底して多く見る、ということです。それがなによりも確かな判断力をもたらしてくれる。そう確信しています。

ところで足を運ぶことで、マンションが売れるか売れないかの判断力がつきましたが、副産物ももたらしてくれました。社長のいう三点は、安い、広い、近いです。しかし、私は、近い、広い、安いの順がわかりやすいと考えました。近いは利便性、広いは快適性ですが、これらは、マンションが本来持っているものです。これに対して安いはその本来持っているものの価値を価格として反映したものにすぎません。もちろん安い、すなわち価格は、売れる売れないの最大の決め手になるのに相違ありませんが、すぐれて近く、広いものは、周辺のマンションより割高にみえても、売れているということをしばしば目の当たりにしたからです。結果としては安かったということになるでしょうが。安い、高いは後からついてくることです。

次に、広い、近いですが、広い、近いの順ではなく、近い、広いの順です。マンションの売れ行きを左右するのは、近いが一番で、次に広いです。マンションか戸建かといえば、利便性をとるか快適性をとるかといわれるぐらいで、マンションは当時から利便性が一番でした。

次に広いということですが、これは単に面積が広いということを指すのではありません。広いとは、住まいとしての快適性のことです。そしてこの快適性の中心を担うのは間取りであるという考えに到りました。もちろん、快適な生活をおくるためにはそれに見合った広さが必要ですが、例えば4人家族で75㎥・3LDKといっても、3LDKという間取りは多種多様です。当時の3LDKは、中Lといって、リビングに外部から直接採光がとれないものや、PP分離といってプライベートルームとパブリックルームが分離されたものなどさまざまでした。高級マンションとなると、もう少し広くて、間取りもそれに相応しいものでした。間取りとは単に部屋数のことをいうのではありません。生活スタイルそのものなのです。快適性を演出するのに、キッチン、バスルーム、トイレ、照明、空調等の設備や、天井、床、内壁等の仕様もありますが、間取りは何といっても快適性を左右する根幹となるものです。

それから、もう一つ、即日完売のマンションを見ていくと、回を重ねていくうちに次第に飽きてきました。というのも、近い、広いを満足させるものでなくても安いものであれば即日完売するもあり、それらはマンションとしての魅力が乏しいからです。私は、即日完売のマンションを見続けましたが、一方で、高級マンションや周囲の環境とマッチする特徴のあるマンションに足を運ぶようになりました。そこで周囲の環境とマッチするマンションや魅力的な間取りに出会うと大変勉強になりました。それだけでなく、心が和みました。そしてその日は充実した一日となりました。