1.学業優秀なKさんの話し
私は田舎の高校に通学していました。この高校は県庁所在地にあり、県内各地から生徒が集まっていました。そのため優秀な生徒が集まっていましたが、それでも都会と比べるとずいぶん少なかったと思います。
その中で、私より10才くらい上の先輩に、Kさんという、飛び抜けて優秀な生徒がいました。
Kさんの大学向け校内試験の成績は抜群で、ほかの生徒とは比べようもなかったということでした。Kさんは東大に進学し、東大の学生時代のときは、すでにある分野で、教授に一目置かれた存在であったということでした。
そのKさんにまつわるつぎのような話しがあります。
高校での数学の授業で、Kさんは突然手をあげ、先生が黒板で示した解析方法とは全く別の解析方法を提示することがあったそうです。
思いもつかない解析方法に先生は驚愕するばかりだったそうです。Kさんは頭をナナメウエに回転させます。そしてやおら手をあげ立ち上がって黒板に向ったそうです。
この話しは、東大に進学した私の8才上の兄から聞かされました。
2.大学でのゼミで頭振りをした結果は
私は大学で民事訴訟法のゼミに入りました。ゼミのI先生は、大変優秀な先生で、学界では、トップクラスであり、若手をキリキリマイさせたという評判の先生でした。
熱意のある人は入ゼミを拒まないという先生の方針があり、私が入ゼミした年は学生が20数人と大所帯でした。
ゼミでは、民事訴訟法の条文を学生、1人、1人に読ませ、その条文について先生が条文を読んだ生徒各自に質問される形式がとられました。
ある日、いつものとおり、学生が条文を読み先生が質問をされました。条文を読んだ学生は返答に窮していました。
しばらく時間が経ちました。
時間が経った後、私は手をあげて、こういう風に考えてよいのではないか、と発言しました。先生は頷かれ、私もそのように考えてよいと思うと言われました。
Iゼミは緊張感で張りつめていました。私はいつも六法全書とメモを用意してゼミにのぞんでいました。
私は兄の言ったことを思い出して、優秀なKさんの真似をして頭をナナメウエに振ってみました。
理屈は全く解りませんが、一つの答えが出てきましたので、それをメモに書き、それを発表しました。
こういう風に考えれば、当事者Aも当事者Bも双方が納得できる。そのように答えたことを記憶しています。
私が頭を振ってみたのは、この1回のみですが、高校の優秀な先輩の仕草が、問題を解き明かすのに役立ったと、今でも確信しています。