朝令暮改はするな
朝令暮改は、多くは否定的な意味に使われています。大人の発言や行動は責任があり、いったん決めたことはそうそう変えるものではない。そうすることで周りから信頼を得る。コロコロ発言を変える人は軽薄である。この考えは大筋で正しいと思います。
朝令暮改をすることに躊躇するな
ところで、ナショナルパナソニックの創始者である松下幸之助氏の言葉に、朝令暮改をすることに躊躇するな、というのがあります。彼が後継者に託した教えの一つだっと記憶しています。大企業のトップともなれば、社員や社会から信頼を得るためには、それこそ朝令暮改をしないことが大切なはずです。しかしそのこととは反対に、朝令暮改をすることを恐れるな、というのは驚きです。しかし普通とは反対の教えですが、経営者のみならずすべての職業人が肝に銘ずるべきだと思います。
社会は日々刻々と変化しています。熟考に熟考を重ねて決断したことも、新しい変化に対応していないことがあります。それに気付けば、撤回したり変更したりすることを逡巡してはならないのです。周りの人を意識してためらうのは間違いです。恰好が悪くても正しい方向に舵を切るべきです。
朝令暮改をすることに躊躇するな、私の行動指針の一つ
私は、朝令暮改をすることに躊躇するなということを行動指針の一つにしています。もちろん一義的には朝令暮改をしないように心がけていますが、それに縛られないで、必要と思ったときは朝令暮改をすることも厭わない、ということです。
以前、当ブログ第20回目の「真の幸福感」の中で書いたことですが、私は、土地の有効利用で、オーナーにマンションを勧めていたのを、途中で思い切ってビルに変更し、オーナーの諒解をとったことがありました。それは当時の社会の流れが、ビルで十分に対応できるように変化していったからです。いったんマンションと決めて計画を進めていったのですから、それまでの苦労は水の泡です。しかし、ビルに変更することに躊躇はしませんでした。
このことは、いわゆる朝令暮改とはちょっと意味が違うかもしれませんが、考えの底にあるものは同じだと思います。結果としては、ビルで正解だったと思っています。土地の有効利用を手がけてから今日まで約30年経過しておりますが、私は今でも、いろいろな場面で朝令暮改をすることに躊躇しないことを行動指針の一つとして実行しています。Aという方向を出したとします。しかし期限ギリギリになってBの方向が正しいと判ったときは、勇気をもってBに変更するように心がけています。その時には決まって朝令暮改をすることに躊躇するな、という言葉が浮かんできます。実際このような場面に遭遇することが、大きな出来事、小さな出来事入り混じってあります。