大宅壮一。「1億総白痴化」や「駅弁大学」などの大矢語録が有名だが、一世を風靡した、評論家、ジャーナリスト、ノンフィクション作家である。1970年（昭和45年）70歳で死去。
梶山季之。昭和37年、「黒の試走車」がヒット。その後「赤いダイヤ」、「夢の超特急」等々の経済小説でベストセラー作家となり、推理小説、時代小説、風俗小説などを量産するが、1975年（昭和50年）45歳で死去。
梶山季之氏がまだ駆け出しであった頃、大宅壮一氏に、小説家として真っ当なものを書きたいと思っているが、どうしたものか、と相談したことがあったそうです。それに対し、大宅壮一氏は、はじめから真っ当なものを目指さないで、はじめのうちは量をこなすのがよい。どんどん書きまくるのが上策である、とアドバイスしたそうです。この記事を雑誌か週刊誌で読み、当時、私は至言だと思いました。大宅壮一氏は梶山季之氏の資質をみて、このようなアドバイスを送ったのかもしれませんが、大宅壮一氏の提唱するアプローチは特別の才能のある人には当てはまらないかもしれませんが、大多数の人に有効なのではないか、また、何も小説に限ったことではなく、学問でもスポーツでも芸術でも多くの分野に当てはまるのではないか、と思っています。
梶山季之氏は、大宅壮一氏のアドバイスをうけたせいか、実に多くの小説を書いておりますが、ライフワークである長編小説「積乱雲」の取材のため訪れた香港で客死しています。
私の中学時代の思い出
私が中学1年の時でしたが、秋になってバレーボールのクラス対抗がありました。当時は9人制バレーですので、各クラスから9人が選ばれチームが構成されました。どのような経緯で選ばれたがわかりませんでしたが、私は9人の中の1人として選ばれ、後衛のセンターをあてがわれました。チームのリーダーは、私とは別の小学校から来たHでした。Hは前衛のセンターです。私は、運動神経はよいほうだと自負していましたので、私へあてがわれた後衛は面白くありません。しかし私よりまだ運動神経がよいと思っていた、私と同じ小学校からきたMは前衛ではなく中衛のセンターでしたので、私は渋々この配置を受け入れることに努めました。クラス対抗に向けて、放課後からの練習が始まりました。リーダーの指図に従って8人はボールを回していきます。リーダーは小学校でバレーボール選手を経験してきたのか、ほかの8人と比べると格段とバレーボールが上手でした。なので、どうにか私は練習につきあっていきました。練習を始めて、何日経ったのでしょうか、あるとき、ボールが以前と違った感覚で飛ぶようになっていることに気づきました。私自身驚きでした。今までと違って、軽く手を触れるだけでボールがポーンと前方に飛ぶのです。このことができるようになってから、しばらく経った頃、リーダーが私の上達ぶりを認めてくれました。
当時、中学校での体育の授業では学期末になると、学業成績をつけるため、鉄棒とかバレーボールとか、その学期で行ったことの実技テストが行われました。バレーボールの実技試験では、クラスから1名が選ばれ、彼がクラスメイト全員とボールのトス交換を行い、それを先生が観察して採点されていました。その1名に先生から指名され、びっくりしたことを今でも鮮明に覚えています。私の上達をクラス対抗のリーダーだけでなく体育の先生も認めたわけです。
マンションで売れる売れないのポイント
以前、当ブログ（現場に足を運ぶ（１）売れるマンションは 近い 広い 安い で決まり 2017.06.13）で書いたことですが、私のいたデベロッパーで、マンションの売れる売れないを正しく判断できる人は残念ながら1人もいませんでしたので、私は一念発起して、はじめのうちは、毎週、土日を使って即日完売したマンションを徹底して見ることにしました。そのとき、私の背中を押してくれたのは、大宅壮一の梶山季之に対するアドバイスでした。「質よりまず量をこなせ」です。私は、近い、広い、安いという物差しはありましたが、これがピンときません、とにかく理屈は後まわし、マンションを見ていきました。相当の数を見ていった頃、不意にピーンとくるものがありました。これは実に不思議なことですが、それからは、なぜ即日完売なのか、はっきり解るようになりました。そして近い、広い、安いを私なりに分析していきました。
質よりまず量をこなせ、は多方面で活用
質よりまず量をこなせ、というのは小説、バレーボール、マンション即日完売の見分け方に限らず、多方面に当てはまるのではないか、と思います。文学、絵画、音楽等々の芸術でも、バレーボール、野球、陸上、サッカー等々のスポーツでも、学問の分野においてさえも、何かをしようとするときに頭に入れておいてよいのではないかと思います。誰しも結論（成果）を早く欲しがります。そうすると質を問題にし、そこからアプローチしたいのが人情です。質を求めることは決しておろそかにできませんが、大宅壮一の「質よりまず量をこなせ」という言葉は意味が深いと思うのですが。
