医者の不養生ならぬ・・・
私の父は中小企業を経営していましたが、自宅と会社がいっしょでした。店舗併用住宅です。
父は手形の期日に追われ、明日は目が覚めたくない、とよく母にこぼしていたそうです。
その頃、開業医で早死にすることを聞くことがありましたが、それについて父は、こんなことを言っていました。医者が早死にするのは、医者の不養生もあるが、住まいと病院がいっしょで、気分転換がままならないことも大きな理由ではないか。ストレスを家にまで持ち込み、ストレスの発散がおもうようにならないためなのではないか。
苦悩の克服
私達は生きている限り苦悩と縁を切ることはできません。
苦悩を克服するため、私達は悩みを人に聞いてもらったり、解決策を本で捜したり、いろいろ試みます。
しかし、時間が悩みを解決してくれるのが一番です。私達はそのことを自分の体験から知っています。
そして空間も、悩んでいる場所から遠く離れることが、解決の一助となるのではないかと思っています。
私は、仕事の煩わしさから解放されるのに、空間を大きく変えることが役立ったことがあります。
スペイン旅行と帰省
私が30歳前半の頃ですが、友人が事業を立ちあげたいということで、2人でスペインに行ったことがあります。スペインの居酒屋、バールを視察するためです。
私は当時サラリーマンでしたから、仕事を整理して行ったのですが、スペインに着いた日は、仕事のことが頭から離れません。商談中のお客様に当面の用事はすべて済ませたのかしら、休みの間、問題がないように書類の整理と引き継ぎは済ませたつもりだが、大丈夫かしら、つぎからつぎと仕事のことが気になってきました。
しかしスペインに着いた日から1日乃至2日も経つと、仕事のことは気にならなくなりました。仕事のことはすっかり忘れてしまったといっていいと思います。
このことは私にとって大きな驚きでした。
それというのも、私は毎年、夏になると休暇をとって郷里に帰っていたのですが、そのときは仕事のことがずっと頭から離れず、1週間も経って休暇を終え、そろそろ上京しそうという段になって、ようやく仕事のことが頭から離れていったからです。
スペイン旅行と帰省で、仕事から解放される時間がこれほどまでに違うのか、私にとっては大きな驚きでした。
時間は仕事の煩しさを忘れさせますが、空間の違いはこれを加速させるのかもしれない、と思いました。
失恋
失恋についても時間と空間が同じように作用すると思います。
失恋したときの落胆は、友人の慰めなどによって癒されるでしょうが、何といっても時間が解決してくれると思います。長い時間をかけることによって、落胆はうすらいでいくものと思います。
そして空間も落胆をやわらげると思います。失恋した場所から遠く離れることによって、落胆はうすめられると思います。
時間と空間
時間と空間は私達を悩みから解放してくれます。
何故、解放してくれるかといえば、時間の経過や空間の移動によって、悩み自体がうすれていくものと思われますが、そのほかにも、過去から離れ、新しいものに心が向っていくことで、その反射効として悩みがうすれていくのではないかと思います。