生きているだけで十分仕合わせだ

今まででハッとしたこと。驚いたこと。生きていくうえで確かなこと。私の息子(昭和60年生まれ)に是非伝えたいことを書いていきます.猫に小判か、みずみずしい類体験か。どうぞ後者でありますように。

詐欺師はプロ 野球でいえばプロでありアマチュアではない

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1.スペイン旅行と現地案内人 

今から37年位前になりますか、私が30才後半の頃、私はT君と二人で、スペインのバルセロナを旅行しました。

T君が事業をやりたいというので、バルセロナの「バール・酒場」の実地見学に行ったのです。

二人はマドリードに一泊してから、つぎにバルセロナに向かいました。バルセロナに着くと、ホテルに荷物を預け、さっそく二人でバルセロナの街に繰り出しました。

夜のバール実地見学の前に折角だから市内見学をしようというのです。

”カメラをぶら下げた二人連れ”

今から考えると、典型的な日本人旅行者の出で立ちです。

天才建築家ガウディの作品を見て歩こうというので、たしか、はじめにグエル公園に行き、つぎに集合住宅であるカサ・ミラを見に行ったと思います。

カサ・ミラの前に立っていると、見知らぬ背の高いスペインの現地人とおぼしき人が私達に近づいてきました。

スペイン人は、私達にわかりやすく、カタコト英語で話しかけてきます。

日本人は金持ちだ、とか何とか言って話しかけ、やたらと日本人のことを誉めまくります。しかし、黙って聞いていると、誉めるばかりではありません。日本人の短所も言ってきます。

そのうち、「闘牛を見ないのか」と言うので、「それは予約しているので明日行くつもりだ」と言うと、「それは大変だ。その切符は偽物だ」と言うのです。私は怪訝に思いましたが、黙ってその場をやり過ごしました。

「これからサグラダファミリア(ガウディ建築の目玉であり、工事中の大教会)に行くところだ」と言うと、「それなら自分が案内する」と言います。

案内されるまましばらく歩いて行くと、サグラダファミリアに着きました。

サグラダファミリアの前はちょっとした広場があって、多くの見物人がいました。

見物人は、サグラダファミリアの塔の中に入るため、長い行列をつくって順番待ちをしています。

スペイン人は、「外で待っているから、塔の中に入って見物してきて下さい」というので、私達二人は行列に加わりサグラダファミリアの塔の中に入ることにしました。

二人が塔の中から出て見学を一通り終えるまでには相当の時間を費やしました。30分、いやもっと長い時間だったと思います。

私達は、もうスペイン人は外で待っていないだろうと思っていましたが、意外にもスペイン人は外でじっと私達を待っていました。

これにはT君は大変感激しました。

それから三人はサグラダファミリアから離れ、街の中をゾロゾロ歩き出しました。

しばらくすると、飲み物を売っている店が見つかりましたので、三人はそこで休憩をとりました。

戸外に設けられたテーブルを囲んで談笑しました。

しばらくすると、スペイン人は「本物の闘牛の切符を手配するから」というのです。

T君はお金を彼に渡そうとします。

私もT君にばかり払わせるのはまずいと思いお金を用意しました。

スペイン人は二人からお金を受け取ると、近くにいたタクシーに乗ってその場から離れてしまいました。

咄嗟に、私は「あっやられた」と叫びましたが、後の祭りです。

ホテルに帰って、ホテルの従業員にそのことを話すと、気の毒そうに、「ホテルの予約は本物です。そのスペイン人は決して切符を買ってあなた方のところに戻って来ないでしょう」と言うのです。

スペイン人は、素朴な感じの人でした。私達二人といっしょに歩きながら、自然体で話してきました。

会話の中では、日本人をしきりと誉めます。しかし、誉めるばかりでは私達も警戒しますが、短所もズバリと言ってきます。これには見知らぬスペイン人を警戒している私達を少し信用させるものがありました。

そして長時間、サグラダファミリアの前で私達を待っていましたので、私達の警戒心は一気にほぐれました。

そしてお金の用立てです。

私達はものの見事に引っ掛かったのです。

 

2.新宿歌舞伎町と客引き 

私が30才半ばの頃だったと思いますが、新宿歌舞伎町で、暴力バーに出くわしたことがあります。

その日は、会社の上司の方と行きつけのカラオケバーに飲みに行きましたが、やや消化不良で、上司と別れた後、もう一杯、気分直しに飲みたいと思い、歌舞伎町をブラブラ歩いていました。

その日はどういうわけか懐も温かく、財布には10数万円入っていました。私がこんなにお金を持って歩くのは後にも先にもこの日ぐらいです。

ブラブラ歩いていると、私の少し斜め後ろから客引きがついて来ました。客引きは、声をかけません、いるでもなくいないでもなく、そっと私のそばを歩いてきます。私はしばらくすると、階段を降りていました。

これが、今から考えると不思議でなりません。普段なら多分階段の前で地下に向って降りるのに逡巡すると思うのですが、その日は何の抵抗もなく私は階段を降りていました。

店の中は、お客と女性店員で適度に混んでいました。席を案内されると女性店員が2人あてがわれました。私は、まあまあの人がいるのを確かめると、少し安心して、ビールを注文しました。

それでもビールを少し飲んだところで、多少不安になってきましたので、今、勘定はいくらくらいかと尋ねました。すると数千円という返事が返ってきました。私は安心して飲み続けました。

しかしやっぱり気持ちわるくなって、再度、今いくらかと尋ねました。そうすると、今度はいっきに値段が跳ね上って10万円というのです。

「あっやられた」と思いました。

私は観念して、出入口の勘定する場所まで行くと、5万しか持ち合わせがない。これで勘弁してくれと頼み込みました。

何とかその場を切り抜けると階段を昇って外に出ました。

懐には10数万ありましたが、よくまあ5万といって切り抜けたものだと後から考えると思うのですが、そのときは妙に腹が据わったことを覚えています。

客引きは、私の足どり、私の年代等々を見て、よいカモだと察知したのでしょう。もしかして私の懐具合も見抜いていたのかもしれません。

私を物の見事に誘導し後ろを振り返らせないのです。プロ中のプロだと思いました。

 

3.詐欺師は詐欺のプロ。しかも詐欺集団はプロが組織化されている。 

スペインの現地案内人は、カメラをぶらさげた二人連れは日本人であって「カモ」であり、

その日本人は誉めるだけではなく、少しだけ短所も言うと信用するようになり、

長時間にわたって待機すればその誠意に素直に感動してしまう、

ということを知っています。そして頃合いを見て無理なくお金を出させる。そのタイミングを知っています。 

新宿歌舞伎町の客引きは、どういう表情をしてどういう歩き方をする通行人がお金を持っているかを知っています。

恐らく何度も何度も実践を繰り返して身につけた目利きでしょう。

またどういう方法で客を誘導するのがよいかを多くの失敗を繰り返しながら自分のものとしています。 

スペインの現地案内人も新宿歌舞伎町の客引きも、プロです。さりげない方法でいとも簡単に私を騙したのです。

今おもえば、両者とも騙すのが自然体で実にたくみなのです。

野球のことを考えるとわかりやすいのですが、アマチュア野球とプロ野球では全くレベルが違います。

プロは、素質のある選手を集め、組織化し、そこで猛練習を繰り返し技術を究めていきます。

詐欺集団は、野球でいえば、プロ野球球団とでもいってよいでしょう。

マチュアとは技術が違います。日々練習を繰り返し技術の向上を目指しています。

実際の経験をもとに、騙す方法に改良を加えていきます。日進月歩の進歩です。

詐欺の被害者は、詐欺については全くの素人です。プロ組織である詐欺集団に敵うわけがありません。

詐欺の誘いに一歩でも踏み入れば、たちまち餌食になってしまいます。どうあがいても泥沼から這い上がることはできません。

詐欺から身を守るためには、詐欺の誘いに気づいて、足を踏み入れないことが肝心です。

スペインの現地案内人には、案内を断ればよかったと思いますし、歌舞伎町の客引きには、客引きを無視すればよかったと思います。

詐欺から身を守るためには、詐欺の誘いの最初の段階でそれに気づき、気づいたら、何か怪しいと思ったら、警察や家族などの第三者に連絡をして相談に乗ってもらうことです。

三者に相談に乗ってもらうことで、冷静な判断や行動に出ることができます。

では、詐欺の最初の段階で、どうも怪しいと気づくにはどうしたらよいか、ということになります。

それには、敵に勝つには敵を知る、ではありませんが、詐欺の手口を知っておくことが役に立つと思います。

しかし詐欺の手口は多くありすぎます。新手の詐欺も発生します。自分に関わりそうなものと最近多く発生しているものを中心にいろいろな機会をとらえて詐欺の手口を学習しておきたいものです。

 

4.父の残した言葉

私の父は、地方で中小企業を経営しておりましたが、人を採用しようとして面接を行なっていた時、人柄、能力ともに申し分のない人に出会ったことがあったそうです。あまりにも良かったので、いつもは後日に採用通知を出すことにしていましたが、ついその場で採用しようとしたことがあったそうです。

しかし、ぐっと我慢して、その場での採用を思いとどまり、そして、念のため、翌日に調査を行なったところ、暴力団関係の人ということが判明し、冷や汗をかいたことがあったそうです。

何事においても、その場ですぐに決めない。必らず一呼吸置くようにする。そうすることで未然に過ちを防ぐことができる。父がそう言っていたということを母から聞いたことがあります。

 以上は前に、当ブログの「知恵」(カテゴリー)の中で掲載した一文です。

私は、父の残した言葉は詐欺集団の詐欺から免れるために役に立つと思っています。

見知らぬところから誘いがあったら、たとえどんなことがあったとしても、すぐにその場で決めて行動に移らない。翌日に結論を出すようにする。たとえそのことで大きな問題が起こることがあってもです。

当ブログの「生きる知恵「ゴーサインは一呼吸置いてから」で間違いを防ぐ」の中では、私が実際に詐欺から免れた経験を二つ書いています。是非読んでみて下さい。