棟方志功
棟方志功といえば、版画家で20世紀の美術を代表する世界的巨匠の一人です。相当昔の話になりますが、某テレビ番組で棟方志功の特集が放映されていました。私には放映された1シーン、1シーンのすべてが興味をそそられるものでした。その中で今でも忘れられないシーンがあります。
孤独
「ゴッホほど孤独というものを知っている人はいない。ゴッホの絵を見ていると、底なしの寂寥感、あまりの寂寥感に驚愕してしまう。ゴッホは寂しい、言いようがなく寂しい」と、棟方志功は、感極まって話していました。ゴッホが切ない、愛おしい、といわんばかりでした。
棟方志功ほどになると、ゴッホの絵を見て、これほどまでに感情が揺さぶられるのか、すごいなあ、と思いました。
私は、ゴッホの絵を画集で見ても、展覧会で実物を見ても、感情が動くことはちっともありません。世間ですごいと言われているのでそうなのかなあ、と思うぐらいです。
ただ、棟方志功が驚愕し、愛おしいとまで思ったゴッホの孤独とはどんな心の状態なのか、想像してみたことがあります。
終点のわからない、果てしなく続く砂漠、枯れたかん木がたまに見られる程度でほかに何も見当たらない荒涼とした砂漠を、何の当てもなく、たった1人で、歩きつづける、そういった情景を思い描いてみました。
路傍の小さな花
棟方志功は路傍に咲く小さな花を見て、感動して叫びます。何と何と美しいだろう、というのです。殆んどの人が見過ごしてしまいそうな、小さな小さな花です。名もついていないのかもしれません。
人がまったく目にとめない道端に咲く小さな花を見つけだす繊細な感性に感心します。その小さな花にびっくりするほど感動する豊かな情感に驚きます。
感性や情感の豊かさが普通の人と別次元にあるのだと思います。そして、私は、せめて小さな花を見つけるようになりたいと思っています。