「慎重を期する」というとき次の一文を思い出します。
-遠泳のことである。子供たちがやるときは大てい多勢集団で列を作って泳ぐ。向う岸までかなりの距離を泳ぐわけである。海の中で波にゆられ、時には水を飲んで泳ぐ。だんだん疲れてくる。向う岸へ近づく頃はくたくたである。砂浜の人影が見え、波打ち際が見えると、やれやれと思う。ところがそれから先が大切なのだ。もう多分足が立つだろうと思って安心して立とうとするとえらいことになる。足は立たない。すぶりと沈む。水をのむ。あばれる。また水をのむ、溺れるということになる。こういう時の鉄則がある。ヒザが底の砂につくまでゆるまずに泳げということである。
この一文を読んで思うこと。
遠泳の途中では、海のど真ん中では、疲れていても気が張って溺れることはまずないでしょう。ところが、浅瀬に近づいて、もう大丈夫だろう、足が立つだろうと思って立っても足が立たないとなるとえらいことになります。あわててしまいます。もがいても、この段階ではくたくたで疲れ切っているので抵抗できません。その結果溺れるということになります。
「慎重を期する」ということは私達がよく使う言葉です。
念には念をおして、ここからが大切、さらに念をおす。
そういうことではないでしょうか。